NPO、やりくり大変 (朝日新聞 平成13年6月2日夕刊)
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「非営利」「ボランティア」と聞くと、カネ勘定とは無縁の世界のように錯覚しがちだが、現実には資金がなければ活動は成り立たない。なのに、NPOの資金基盤を支える社会的な仕組みの整備は遅れている。 政府は、今年10月にNPOへの寄付に対して税控除する法律を施行するが、対象となるNPOの条件が厳しく、実効性が薄いとNPO側からは強い不満が出されている。 こうした中で、NPOの間では、自力で資金を稼ぐための「事業」を拡大する動きが広がった。また、NPOが事業会社を設立し、会社の利益から配当を受けて活動資金にする試みも始まっている。 欧米では、収益活動に比重が移り、NPO本来の活動目的が薄れたり、事業権益をめぐりNPO同士が争ったり、不正を働いたりする事例も出ている。 事業を手がけるNPOは運営をいっそう透明にし、社会や環境の変化に合わせて活動のあり方を見直していく必要がある。 |
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静岡県のNPO「深良の里たけすみの会」は竹炭づくりを通じて高齢者に生きがいを提供するのが目的。10年ほど前から活動を始めたが、会員からの年会費だけでは、炭づくりの借地代も払えない。そこで、たけすみの会の発起人西島則夫理事はバス事業の収益をNPO活動にあてることを思いついた。 ところが、県の保証協会に融資の保証を打診したところ、「NPOは対象ではありません」。国民金融公庫が相談に応じてくれることになったが、西島さんは「国も県もNPO推進と言うが、保証制度すらない。資金力のないNPOはつぶれてしまう。」と感じている。 |
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NPO活動で、無視できないのが人件費だ。NPOや草の根の市民活動を支援している「大阪ボランティア協会」は、詳細な収支情報を公開している。昨年度の協会の総支出の実質は1億5150万円。正規職員12人と嘱託職員、アルバイトを含む人件費の総額は6990万円で46%を占める。それでも、100人を超すボランティアが活動を支えているため、人件費比率はよそに比べ低いという。 |
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資金不足のNPOには、企業や財団の助成金や自治体からの補助金、委託事業も貴重な収入源だ。競艇の収益金の一部でNPOを助成している日本船舶振興会には、申請時期の6月になると申し込みが殺到する。年間予算はここ数年16億円と一定だが、昨年の応募件数は1608団体と2年間に6割増えた。 |
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途上国の子供を支援するNPO「ワールド・ビジョン・ジャパン」は国内各地で開く交流会で、参加者が飽きないように、ビンゴなどのゲームを取り入れている。 ワールド・ビジョン・ジャパンは年間約15億円の活動予算の7割以上を、募金や寄付でまかなう伝統的なNPOだ。「どれだけ多くの人に関心や信頼感をもってもらえるか」(高木克巳国内事業部長)が勝負。見せる努力や寄付者へのサービスに知恵を絞る。 |
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