○テンペラの種類と特質

■エッグテンペラ
歴史的には卵白や卵黄をバインダーとしたという記述が11世紀頃の文書として残っているようですが、作品として現在見られるものは、卵黄をバインダーとした「卵黄テンペラ」が中心です。
板の上に石膏下地を施し、卵黄のバインダーで顔料が混ぜられ、絵具として塗られました。宗教的荘厳のため、金箔を背景に使った作品も多く「黄金背景テンペラ」とも称されています。
バインダーの処方を再現した1例は次の通りです。
卵黄 1個分 (通常サイズでは20ml)
食酢 小さじ1杯 (約 5ml)
小さじ3杯 (約15ml)
 
■卵黄テンペラの特質
   ・水に溶けて、乾くと水に侵されない。
   ・速乾性である。
   ・技法上の制約を受ける。ぼかしはハッチングでおこなう。
   ・絵具の被覆力が弱い。鮮明で深い。下層の影響大。重色効果
   ・厚塗りができない。厚いと亀裂する。
   ・構図の変更ができない。計画的描画が必要。
   ・変色しない。5〜600年以上経っても美しいまま。


■ミックステンペラ
初期の油絵具は、透明性に富んでいたもののボディー感が希薄であったことは当時の作品からうかがえます。
イタリアではテンペラが部分的に彩色として使用されたのに対しフランドルでは、テンペラ絵具と油絵具の互層として絵が構成されました。
テンペラによる下絵に油絵具のグラッシがのり、またテンペラ絵具による描起こしを行い、さらに油絵具のグラッシを重ねると言う工程を数度重ねて、テンペラと油絵具特長を生かした幅の広い表現を可能にしました。
この油絵具との併用技法は、フランドル技法から改良されつつ今日まで行われています。
バインダーの処方例は、次のような内容です。
全卵 1個分(通常サイズでは50ml)
油性分* 卵と等量 (約50ml)
適量(使う時点で適した濃度に薄めます。)
 
■ミックステンペラの特質
   ・水に溶けて、乾くと水に侵されない。
   ・比較的速乾性である。水分の蒸発により見かけの乾燥をする。
   ・卵黄テンペラよりも絵具の伸びが自由でぼかしやグレーズも可能。
   ・卵黄テンペラよりも堅牢である。
   ・油成分の混合比により(50%以上100%未満)油絵具との併用が可能となる。
   ・未乾燥の油絵具層上に水性の含油テンペラ絵具が弾かずにのる。
   ・細密描写や顔料の発色を生かした技法ができる。
   ・卵黄テンペラよりもやや明度に欠ける。
 
よく混ぜ合わせた上記のバインダーに水で練り合わせた顔料を1:1程度に混ぜ合わせると卵黄テンペラの絵具ができます。

顔料によりバインダーの量は多少異なります。
石膏地に塗られた卵黄テンペラ絵具は、明るく不透明な発色をします。絵具にはあまり伸びがなく、彩色は通常ハッチングとよばれる線描の積み重ねで表現されます。
絵具の伸びの欠如は、表現自体を生硬にする傾向があります。

油性分を調節する(7〜15ml前後)ことで顔料の発色を明るくすることも濡れ色にすることもできるので、作家の表現に合わせて幅広い効果が得られます。


■テンペラグラッサ
15世紀のルネッサンス期になると、卵のバインダーに油性分を加え、絵具の伸びを改善する処方が開発されてきます。ルネッサンスのより自然主義的な写実表現にマッチした絵具に改良されます。
それまでの油性分を含まないテンペラ技法を総称して「テンペラ・マグラtempera magra」といい、油を加えたテンペラ技法を「テンペラ・グラッサtempera grassa」と別のジャンルとして大別しました。
テンペラ・グラッサの代表的な作品は、ボッティッチェリの「春」や「ビーナスの誕生」などです。
油性分を調節する(7〜15ml前後)ことで顔料の発色を明るくすることも濡れ色にすることもできるので、作家の表現に合わせて幅広い効果が得られます。
バインダーの処方例は次の通りです。
卵黄
1個分(通常サイズでは20ml)
油性分* 小さじ2杯 (約10ml)
小さじ4杯 (約20ml)
■テンペラグラッサの特質
   ・水に溶けて、乾くと水に侵されない。
   ・比較的速乾性である。水分の蒸発により見かけの乾燥をする。
   ・卵黄テンペラよりも絵具の伸びが自由でぼかしやグレーズも可能。
   ・卵黄テンペラよりも堅牢である。
   ・油成分の混合比により(50%以上100%未満)油絵具との併用が可能となる。
   ・未乾燥の油絵具層上に水性の含油テンペラ絵具が弾かずにのる。
   ・細密描写や顔料の発色を生かした技法ができる。
   ・卵黄テンペラよりもやや明度に欠ける。
 
よく混ぜ合わせた上記のバインダーに水で練り合わせた顔料を1:1程度に混ぜ合わせると卵黄テンペラの絵具ができます。顔料によりバインダーの量は多少異なります。
石膏地に塗られた卵黄テンペラ絵具は、明るく不透明な発色をします。絵具にはあまり伸びがなく、彩色は通常ハッチングとよばれる線描の積み重ねで表現されます。
絵具の伸びの欠如は、表現自体を生硬にする傾向があります。


目次
テンペラ絵具とは?
テンペラの描き方
各種テンペラの特質
エッグテンペラ
テンペラの材料 テンペラグラッサ
ミックステンペラ


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